皆様こんにちは、ネットワーク事業部の浅井です。
今回は、パソコンやネットワーク機器の電源を保護するはずのUPSが原因となり、突然パソコンがシャットダウンしてしまったという事例をご紹介いたします。
ここ約半年でUPSが起因で接続先機器の電源が喪失してしまう事例が複数件ありましたので注意喚起できればと思います。
突然パソコンがシャットダウン
今回のトラブルはいずれも似たような原因によるものでした。
そのうちの一つのA社様の事例を元にご紹介したいと思います。
問題のあったパソコンは、24時間稼働してプログラムを動作させておくための端末であり常に操作、監視しているスタッフはいません。
また、基本的に内部でプログラムが動いているだけで誰も操作をしないような状況でした。
パソコンは数年間稼働している中で何度か勝手に再起動やシャットダウンをしてしまうということもありましたが比較的安定して稼働していました。
そんなパソコンが今年の4月頃から1週間に何回か、何の前触れもなくシャットダウンをするようになってしまったのです。
その際の症状としては、
『突然シャットダウンしてしまう』
『シャットダウンのタイミングは不定期』
という状態でした。
原因調査
調査を開始した当初は、24時間稼働しており稼働開始から数年経過しているパソコンのため、本体の経年劣化によるものかと考えました。
ただ、具体的な原因がわからないと部品の交換等も行えないため、まずはパソコンの調査を行うことにしました。
イベントビューアを確認
突然シャットダウンしてしまうこと以外は問題なく動作していたため、イベントビューアを確認をします。
するとシャットダウンのタイミングには、『 以前のシステム シャットダウンは予期されていませんでした。』というエラーが記録されていました。
この表示は、何かしらの異常でブルースクリーンが発生した場合や、電源喪失等によるシャットダウンが発生した場合に記録されることの多いエラーです。
シャットダウンの前後のログを確認したものの、特に処理が行われた様子もなくWindowsUpdateが原因ということは無さそうです。
また、もしブルースクリーンによるシステムシャットダウンであれば再起動となる場合が多いですが、今回は再起動もせず電源が落ちている状態となっていたためブルースクリーンの可能性も低いと考えられました。
他にめぼしいエラー行が無いかを確認しましたが、不良セクタのエラーも無くシャットダウンに関連しそうなエラーはありませんでした。
イベントビューアを見終わるころには、『もしかすると電源パーツに問題があるかもしれない…』と疑い始めていました。
電源周辺の確認
恐らく電源の問題であろうと目星をつけてパソコンの電源周りを確認すると、壁の電源にAPC製のUPSが接続されており、そのUPSの先にパソコンが接続されていました。
もしかして、と思いUPSのディスプレイを確認したりセルフチェックを実施してみましたが、特に問題は検出されません。
ただ、問題の切り分けを行うためにひとまずUPSとは別の電源に接続して少しの間様子を見ることにしました。
原因はUPS
確認の結果、UPSが原因だと突き止めることができました。
UPSの配下から外してパソコンを1ヵ月ほど稼働させてみたところ、ピタリと問題のシャットダウンが発生しなくなりました。
トラブルの原因は、あくまで推測にはなりますがUPS本体の故障であったと思われます。
バッテリーに不調をきたしていた可能性も0ではありませんが、バッテリー残量の表示に異常はなかった点とセルフチェック自体も問題が無かったため本体側の故障であろうと考えています。
今回、問題がわかりにくかった要因の一つとして、UPSにはパソコン以外にもクレジット決済端末や音楽再生機器等も接続されていましたが、それらは電力供給が復旧すれば自動で起動する機器であったという点です。
電力供給の停止は他の機器にも等しく発生していましたが、自動復旧していたためあたかもパソコンのみ電源が消失しているように見えていたのです。
例えば、パソコンが2台あれば同じタイミングでシャットダウンが発生していることが確認できるため問題の絞り込みがより簡単であったと考えられます。
その後、UPSを交換して稼働をさせていますが、現在パソコンは問題なく動作を続けています。
UPSの寿命ついて
今回の原因はUPS本体でしたが、UPSの寿命はどの程度なのでしょうか。
サイズによっても耐用年数は大きく異なるため、今回はオフィスでも使用されやすい10kVA未満の製品を例に記載していきます。
バッテリー
バッテリーの寿命は、一般製品か長寿製品かでも異なります。
一般製品の場合であれば、2.5年程度、長寿製品であれば4年程度と記載されている場合が多いです。
ただ、この年数にも落とし穴があり、稼働環境の温度によっても大きく寿命が変わってきてしまいます。
例えば、25℃以下の環境であれば2.5年稼働できるとされている製品であっても、環境温度が30℃になると1.7年、35℃になると半分の1.2年と極端に寿命が短くなってしまうのです。
本体周辺の風通しが悪かったり、埃が溜まっていたり、直射日光が当たっていたり、と劣悪な環境で利用していないか確認をするようにしましょう。
UPS本体
メーカーによって多少の差異はありますが、概ね5~7年と記載されていることが多いです。
UPSはパソコン等と違い、動作が遅くなったりといった予兆を確認しにくいため、故障するまで使用してしまいがちです。
バッテリーの寿命との兼ね合いを考えると、2回目のバッテリーのアラートのタイミングで本体の当初購入した時期を確認したほうが良いでしょう。
バッテリーと違い、本体の故障の場合は接続されている機器の電源が全て喪失してしまうため、故障時の被害が大きくなることが予想されます。
交換による効果を実感しにくい機器ではありますが、保険のために入れているUPSが事故の要因とならないように早めの交換を心がけたほうがよいかもしれません。
まとめ
今回ご紹介したのと同じような現象が記事で紹介した内容も含め約半年の間に4件も発生しましたが、そのどれも一時的にUPSの電源が喪失するもののその後何事もなかったかのように稼働しているという状況でした。
本来であれば大事な機器の電力供給が止まらないようにするため、突然の電力供給停止による機器の故障を防ぐため、といった理由で導入するUPSですが、逆に問題の原因となる場合もあります。
交換した際に効果を実感しやすい、パソコンやサーバ、NAS、ネットワーク機器とは違い、UPSのリプレイスはついつい後回しになりがちです。
ですが、もし問題が発生した際はその先に接続されている機器の稼働が停止してしまったり、突然の電源喪失によって機器が故障してしまったりといったリスクもあります。
今回の記事を読んで『あれ?いつUPS設置したっけ、確認してみるか』と考える方が少しでもいらっしゃれば幸いです。
弊社では、UPSの設置や交換に関しても承っております。お気軽にご相談いただければと思います。